なぜ転職時のキャリアプランは思いつかないのか?

なぜ転職時のキャリアプランは思いつかないのか?

転職活動中、面接官から必ずといっていいほど、

「あなたのキャリアプランを教えてください」

と質問されます。

しっかり想定問答を準備してきた人ほど、5年先、10年先のキャリアプランをスラスラと答えるのですが、このキャリアプランを実践した人は、果たしてどれだけいるのでしょう?

わたしは40歳までに4回の転職を経験しましたが、面接で答えたキャリアプランを1つも覚えていませんし、実践もしていません。要は転職で内定を得るため、面接で合格するために作ったキャリアプランだったから、忘れてしまうし実践もしないのだと思います。

その場しのぎのキャリアプランに対して自己嫌悪に陥ったわたしは、ある日を境に「時代の変化のスピードが加速しているので、5年先のキャリアプランが描けません。今この瞬間を大切にして、積み重ねた先に理想のキャリアプランが出来上がると思っています」と、まるでベストセラー『嫌われる勇気』に書いてあるような回答を面接でするようになっていました。

なぜ、5年先、10年先のキャリアプランは思いつかないのでしょう?

「計画された偶発性理論」とキャリアプラン

スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した『計画された偶発性理論』をご紹介します。

この理論は、キャリアの8割は予想しない偶然によって決定されるというものです。もしこの理論が正しいとすれば、キャリアプランなんて思いつかないものなのかもしれません。

これだけ世の中が劇的に変化していて先が見通せない時代になっているのに、5年先、10年先のキャリアプランを考えること自体が難しいですし、そのプランを目標にしてもその通りにならない確率のほうが高いようです。

では、キャリアは偶然によって決まるのだから何もしなくていい。流されるままキャリアを積んだあとで、振り返ればいいのかと言えばそうではありません。「計画された」という言葉がポイントで、分かりやすくいうと偶然を引き寄せる行動は計画的でなくてはなりません。

具体的に、計画された偶発性をどうやって生み出せばいいのでしょう?  転職サイトDodaにあった、次の5つを意識しながら行動してみましょう。

(1)「好奇心」 ―― たえず新しい学習の機会を模索し続けること
(2)「持続性」 ―― 失敗に屈せず、努力し続けること
(3)「楽観性」 ―― 新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
(4)「柔軟性」 ―― こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
(5)「冒険心」 ―― 結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと

引用元:https://mainichi.doda.jp/article/2018/09/10/52.html

「好奇心」を持って学習を続けていく中で、今の自分には想像できていない新たなキャリアが生まれるきっかけになる場合があります。しかしきっかけだけでは足りず、ある程度「持続性」を意識しながら、努力を続ける中で見えなかったキャリアプランが見えてくることもあります。

自分の中にはない新しいキャリアなので、当然先は見通せません。それでも「楽観性」をもって、このチャンスを実現するという強い意思が必要です。こうしたキャリアを進むためには、今までのこだわりを捨てる「柔軟性」や「冒険心」がないといけません。計画された偶発性理論は、こうした行動の積み重ねのうえで完成するものです。

40代転職にこそ必要な「計画された偶発性理論」

40歳を過ぎると、30代よりも書類選考は通らず、面接に辿り着くだけでも一苦労です。

そうした情報は広く出回っているので、今まで苦労して手に入れたポジションや年収を何とか死守して、定年まで逃げ切れないかという守りの気持ちがどこかで働きます。ここで「計画された偶発性理論」に必要な5つの意識を、40代の立場で考えます。

40代になっても、「好奇心」は持ち続けられると思います。しかし「持続性」にある失敗を恐れやすくなりますし、「楽観性」にある新しい機会に明るい未来を感じづらくなります。「柔軟性」にあるこれまでの実績やプライドが邪魔して、こだわりや信念を変えられなくなり、リスクテイクする「冒険心」が失われます。

すべての人に当てはまるわけではありませんが、40代になると若い頃よりも現実的に物事を見るようになります。しかし40代以降のセカンドキャリアについて考えたとき、この5つを実践できるかどうかはとても大切です。

仕事も家庭生活もルーティン化が進む40代は、偶然を引き寄せる行動が自然と減っていきます。また偶然を引き寄せているのに、捕まえて自分のものにするパワーが減っています。

キャリアの8割が偶然だったとしても、定年退職を迎えたときに自分の仕事人生は楽しかったと言えるようになれるといいですし、後悔のないキャリアを築くのが理想です。

自分のキャリアをいきいきと語る人の特徴として、わたしは自分のやってきた仕事やプロジェクトを「西暦で」語れるかどうかを目安にしています。2020年に新規事業を立ち上げて、2年かけて軌道に乗せたとか、2022年に企画した商品がメガヒットを飛ばしたとか、仕事の時期を明確に語れるほど充実していた証拠です。ご自身のこれまでの仕事を西暦で語れない方は、偶然を引き寄せる努力をすべきです。

転職の面接のために、キャリアプランを考える必要はあると思います。しかし、それとは別に「計画された偶発性理論」を頭に持ちながら自分のキャリアと向き合って、行動に移してみましょう。あとで自分のキャリアを振り返ったときに、その場しのぎではない理想のキャリアプランが完成していると思います。

CanWillとは

『Can Will』では、第一線のキャリアコンサルタントが、ミドル・シニア世代のあなたの強みや志向を掘り下げて、納得感の高いキャリア相談を行っています。 「転職すべきか、今の会社で働き続けるべきか?」、「自分の強みが分からない」、「職務経歴書の書き方が分からない」、「自分の市場価値について客観的な評価ほしい」。 このようなキャリアに対するお悩みやモヤモヤがありましたら、ぜひ一度『Can Will』のキャリアプロフェッショナルにご相談ください。