「40歳定年制」の語源を理解し、自分のキャリアを考える

「40歳定年制」の語源を理解し、自分のキャリアを考える

「40歳定年制」の文字に、ドキッとした方は多いかもしれません。なぜ「40歳定年制」という言葉が登場したのでしょう? その語源と「40歳定年制」を意識して働くメリットについて解説します。

40歳定年制とは?

「40歳定年制」は、2013年に発売された書籍『日本成長戦略 40歳定年制 経済と雇用の心配がなくなる日』(さくら舎)から来ており、著者である東京大学大学院教授の柳川範之氏が、2050年に向けて日本が繁栄するために考えた提言です。

この本を読んでみたのですが、本のタイトルである「40歳定年制」の言葉が持つインパクトが強すぎて、本来の意味と違った広まり方をしているような気がします。「40歳定年制」について、本の内容を引用します。

「40歳で強制的に退職するよう政府が決める制度」と誤解されがちだ。そうではない。これは、すべての人がもっと自由に働き方を選び、65歳といわず、元気でやる気がある限り、75歳でも80歳でも正社員として働けるようにするための提言なのだ。

「40歳で社員全員を定年にして、リストラしろ」という意味と勘違いして検索されたかもしれませんが、実際は「40歳スキル再構築制」と置き換えて考えたほうがいいです。また、現在の正社員や雇用契約のあり方を変えるためのひとつの提言ともいえます。

「40歳定年制」のようなドラスティックな変革が実施されると、企業は素早く対応するものだ。フルタイムの終身雇用だけが正社員と限定されなくなれば、企業は働き手のそれまでのキャリアや能力を検討して、求める人材を雇いやすくなる。その場合の転職マーケットというのは、いまとはずいぶん異なったものになっているはずだ。

安定した人生を送るためには、低賃金でスキルが身に付きづらい非正規ではなく、正社員になっておく必要があると考える方は多くいます。一方で、安定、安心感を得られる正社員のポジションに固執し、結果として働き方が窮屈になっています。

新型コロナウイルスによる働き方の変化や定年延長の動きなど、外部環境が急速に変化しているのに、正社員のポジションが安全とはいえません。これから先もテクノロジーの進化などによって、正社員の価値観は大きく変化していきます。

人生100年時代と言われるようになった今、60代、70代になっても働くためには、40歳までに積み上げたスキルだけで生きていくのではなく、スキルを再構築することがセーフティネットにもなると本にも書いてあります。

現実的に「40歳定年制」を実施する企業が増えているわけではありませんが、「40歳定年制」の発想を自分のキャリアに取り入れて働くことで危機感が生まれ、新しいスキルやキャリアの再構築をするきっかけになります。

40歳定年制を意識して働く

東京商工リサーチの調査によると、倒産した企業の平均寿命は23.3年(2020年現在)です。大卒22歳で入社すれば、45歳のときには会社は倒産してしまうのです。そもそも、企業の存続自体が難しい世の中になっています。

どんなに正社員のポジションを確保して安心していても、会社自体が時代の変化についていけない、または業種自体が成熟してしまって衰退期に入っていては、正社員に固執する意味はありません。その会社でしか通用しないスキルを磨いていても、転職市場では価値のない人間と判断されてしまいます。

在籍している会社の業績は、順調に拡大しているでしょうか?新しいマーケットを常に開拓して、市場規模を拡大できているでしょうか?40歳定年制を頭に入れつつ、企業の平均寿命も考えると、自分のキャリアやスキルの劣化を防げるので、常に意識しておきましょう。

もし40歳で定年するとしたら

もし本当に40歳で定年するべく今から動き出すとしたら、おそらくFIRE(Financial Independence, Retire Early)を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか?

FIREは経済的自立と早期リタイアを意味していますが、FIREの前提条件は資産運用しながら運用益で生活できる目途をつけることなので、40歳になるまでにそれだけの資産が形成できるかということにもなります。仮にFIREが実現できなかったとしても、投資の勉強は40歳になる前からやっておくべきだと思います。

日本人全体の給料がなかなか上がらない中で、定年後にもお金を増やす、守るためにはマネーリテラシーの向上が欠かせません。どんなにキャリアアップをして転職を繰り返しても、理想とする年収には届かないことも多くあります。

また年金支給開始年齢はどんどん遅くなりますし、支給額も減額される可能性が高いので、FIREを目指さないにしても、最低限のお金の勉強は40代より前から勉強しておくべきです。

例えば株式投資や投資信託を始めてみたり、株式総会などに参加したりすることで他の業界、業種のビジネスの一端を垣間見ることができます。あるいは各国の経済指標、為替の動向を見る中で、すべて資産を円で持つべきなのか、他国通貨でも保有すべきかなど考えるきっかけにもなります。

定年後に投資を始めて失敗すると、やり直しがきかないうえに老後の資金まで失うことになるので、投資に失敗するにしても若いうちに経験しておくべきでしょう。どのようなポートフォリオを組むのがいいのか、自分の資産状況を見ながら1度考えてみてください。

このように40歳で定年すると考えるだけで、自分の人生の前倒しができるようになります。今は忙しいからと定年後にやりたいことを先送りするのではなく、やりたいことはやりつつマネーリテラシーも高めておきましょう。

CanWillとは

『Can Will』では、第一線のキャリアコンサルタントが、ミドル・シニア世代のあなたの強みや志向を掘り下げて、納得感の高いキャリア相談を行っています。 「転職すべきか、今の会社で働き続けるべきか?」、「自分の強みが分からない」、「職務経歴書の書き方が分からない」、「自分の市場価値について客観的な評価ほしい」。 このようなキャリアに対するお悩みやモヤモヤがありましたら、ぜひ一度『Can Will』のキャリアプロフェッショナルにご相談ください。