スタートアップ企業に転職するメリット・デメリットとキャリアパス
スタートアップ企業への転職を目指したいものの、年齢による適応不安やリスクへの恐れなどの理由から、慎重な姿勢を取る40代の方は少なくありません。スタートアップの仕組みやメリット・デメリットなどを理解すれば、大きな決断となる転職にも積極的にチャレンジできると期待できます。
この記事では、スタートアップの特徴やキャリアパスに焦点を当て、スタートアップ企業への転職に挑戦するための重要なポイントや注意点について解説します。
スタートアップとは
スタートアップとは、短期間のうちに急激な成長を遂げ、新しいアイデアや技術を基に事業展開する企業を指します。代表的な例としては、GoogleやAmazon、Facebookなどが挙げられます。これらの企業は、スタートアップから始まり、その後急速な成長を遂げ、世界的なテクノロジー企業として広く知られています。
スタートアップ企業の特徴
スタートアップと呼ばれる企業にはいくつかの共通した特徴があります。そのなかで特に注目されている3点について詳しく解説していきます。
1.革新性がある
スタートアップ企業というとまず思い浮かぶ特徴が『革新性』です。『イノベーション』という言葉を使うこともありますが、従来の枠にとらわれない新しい技術や考えを作り上げ、価値を生み出すことで新しいビジネスを生んでいきくのがスタートアップ企業です。
通常、ベンチャーキャピタルや投資家から資金調達を行い、その資金を活用してアイデアを実現化し、市場に革新的な商品やサービスを提供します。
2.急成長を目指す
スタートアップ企業は、急激な成長を目標に、新たな視点からビジネスを展開します。そのような目標があることから、『Jカーブ』を描いた事業計画であることが多いとされています。事業開始から数年は大きな資金調達と0から1を作り出す工程であることにより赤字が続きますが、イノベーションを起こしたプロダクトやサービスが完成すると短期間に急激な黒字転換をし、初期の赤字損失を回収するような成長を目指しています。
革命を起こすかのような激動を乗り越える企業が多く、過去にないビジネス手法で既存のビジネスモデルに挑戦することもしばしばあります。
3.出口戦略
立ち上げた事業を何らかの手段で他の会社や人に渡すことを出口戦略といいます。大きく分けてIPO(新規公開株)やM&A(企業の合併・買収)の2つの方法があります。スタートアップ企業の場合は、スタートアップ事業が受けた出資の資金を回収する手段として、事業の買収や合併を行うことが出口戦略といえます。
成功したスタートアップは急速な成長を遂げた後すぐに売却し、短期間での利益回収をするというサイクルを繰り返す起業家も多くいます。
ベンチャーとの違い
スタートアップ企業とベンチャー企業は、いずれも新規事業を展開し、勢いのある成長過程の企業として捉えられますが、いくつかの違いがあります。以下の表ではそれぞれの違いについてまとめています。
スタートアップ企業 | ベンチャー企業 | |
ビジネスモデル | 新しいビジネスモデルを生み出す | 既存のビジネスモデルに革新を加える |
リスクと期間 | 短期的なスパンで高リスク | 中長期的なスパンで比較的低リスク |
収益化のタイミング | 成長後に収益化 | 比較的早い段階で収益化 |
成長の方向性 | 急速な成長を目指す | 安定的な成長を目指す |
出口戦略 | IPOやM&Aによる出口戦略が一般的 | 上場せずに自立して成長するケースもある |
スタートアップ企業でのキャリアパス
スタートアップ企業への転職は、大企業や一般企業とは異なる独自のキャリアパスを描くことができます。
例えば、多くのスタートアップ企業では部署の垣根を超えた幅広い仕事を担当します。従来の役割分担型の進め方とは違い、個人が主体的にさまざまな業務に取り組みます。また、少数精鋭制のため意思決定のスピードが速く、アイデアや提案が素早く形になることが特徴です。
既存の枠にとらわれずに、自らの意志やアイデアを発揮できる機会が増え、日々刺激的な環境で新たなプロジェクトに関わることができます。
スタートアップ企業で事業を成長させる経験を積んだ後のキャリアパスとしては、自分自身も起業家を目指したり、成長させた事業の役員や組織の責任者を目指したりするという魅力的なルートがあります。初期段階で入社し、上場などの大きな目標を達成するまでに事業を成長させる課程は大変ですが、得られる経験も大きいと考えられます。
スタートアップ企業へ転職するメリット
スタートアップ企業への転職は、その特異性から一般的な企業ではすることのない経験やチャレンジの機会に恵まれ、長年同じ企業で勤めていた人こそ新鮮な体験の繰り返しになるかもしれません。変化への順応は大変かもしれませんが、スタートアップ企業だからこそ得られるメリットもあります。そこで、ここからはスタートアップ企業への転職で得られる4つのメリットについて解説していきます。
1.幅広い仕事の経験を積める
前述のとおりスタートアップ企業では急激な成長に向けて常に社内ではさまざまな変化が起こります。また、1人あたりが担当する業務も多義にわたり、短期間で幅広い仕事を経験することになります。少数精鋭の環境で働くため、未経験の業務を担当する機会もあります。多岐にわたるスキルを磨くことができ、キャリアの幅を広げることにつながります。
2.柔軟な働き方ができる
スタートアップ企業では、多様な働き方が進んでおり、リモートワークやフレックス制など取り入れていることも多いです。従来の働き方に縛られず、自分のライフスタイルに合わせた効率的な仕事の進め方ができます。ワークライフバランスを重視しつつ、仕事に集中する環境が整っています。
3.風通しが良い
少数精鋭のスタートアップ企業は、経営陣や上司との距離が近く風通しの良い環境が一般的です。チーム全体で意見交換がしやすく、自分のアイデアや提案が素早く反映されることもあります。コミュニケーションを通して企業の方針にも参加できるため、意欲的な仕事への取り組みにもつながります。
4.やりがいを感じやすい
少数精鋭制では、入社直後でも新規プロジェクトやサービスの立ち上げを担当することもあります。挑戦と成果が密接に結びついている環境で企業とともに自分自身も成長し、刺激的でやりがいを感じながらキャリアを築くことができます。
スタートアップ企業へ転職するデメリット
スタートアップ企業への転職は、大企業とは違う働き方や新たな価値観を見出すやりがいなどのメリットがありますが、大企業とは違うからこそのデメリットもあります。スタートアップ企業への転職を考える前に知っておきたいデメリット5つを紹介します。
1.1人にかかる責任や仕事量が大きい
スタートアップ企業は従業員の数が限られているため、一人ひとりが複数の業務を担当します。また、部署の垣根もないことから未経験の業務を担当して成果を求められることもあります。そのため、仕事の多忙さや責任の重圧に大きく直面しハードワークになる可能性があります。
2.戦略や社内の体制が流動的
急速な変化へ迅速に対応するため、計画の変更や新しい方針の導入が頻繁に行われることがあります。戦略や組織体制が流動的な状況下では、安定性が低いという側面も考えられます。
3.教育体制が整っていない場合もある
スタートアップ企業は、大企業と比較すると研修制度や教育体制が充実していないことがあります。このような場合、独学や先輩社員からのアドバイスを通して、新しい業務や技術に迅速に適応していかなければなりません。
4.福利厚生が充実していない場合もある
大企業と比べて予算やリソースが限られているため、給与や社会保険などの福利厚生が十分に整っていない場合があります。事業の成長に比例して充実していくこともありますが、初期段階では福利厚生の充実はあまり期待できません。
5.倒産のリスクがある
市場競争が激しいなかで短期間に成長を遂げることが期待される反面、企業の将来性に不確実性が伴います。倒産のリスクを抱えているため、安定性を求める方にとっては検討すべきポイントともいえます。
40代でスタートアップ企業へ転職するには
一般的な転職でも同様ですが、40代の転職には企業側から求められる経験や実績などの要素が多く、事前に準備をしておく必要があります。また、ひと口にスタートアップ企業といっても、事業のジャンルや会社の形態はさまざまです。希望のスタートアップ企業がどのような状況であるか理解することも必要です。ここでは、失敗しないために抑えておくべき重要な点についてご説明します。
40代の転職市場動向を把握する
40代の方がスタートアップ企業への転職を考える際、40代の転職市場動向を把握し、どの分野やポジションが求められているかをリサーチすることが重要です。
スタートアップ企業では、その成長スピードから経験豊富な人材が求められています。特に、大手企業でマネジメントクラスの経験を積んだ40代にとっては、重要なポジションやCOO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)、CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)、CSO(Chief Strategy Officer:最高戦略責任者)といったCxO(Chief x Officer:最高○○責任者)クラスの求人も見られます。
スタートアップ企業への転職で注意が必要な点
スタートアップ企業への転職をする際に注意が必要なポイントがいくつかあります。ここでは、特に40代のミドル世代が注意すべき点について解説していきます。
1.過去の職場と比較しない
過去の職場との比較は、新しい環境に対応するうえで妨げになり得ます。特にスタートアップ企業は成長の渦中にいるため常に職場環境や会社のベクトル、業務の進め方などが変化する可能性があります。
変化が常に起こっているなかで、従来のビジネスモデルやプロセスが通用しないことも多くあります。そのため、過去の成功体験や慣習にとらわれず、新しいアイデアや手法を積極的に吸収し適応する意識を持つことが重要です。
2.年齢にこだわらない
スタートアップ企業では、若手メンバーが活躍していることが一般的です。企業の年齢構成によっては、自分よりも年下の上司がいたり、経営幹部クラスが30代である可能性もあります。年齢にこだわらず、若手メンバーと協力して組織全体の成長に貢献することが求められます。
3.マッチングを見極める
自分の希望と企業側が提示するポジションがマッチングするか見極めが必要です。スタートアップでは、同じ即戦力であっても成長フェーズごとに求められる人材は異なります。成長フェーズは、創業間もない『シード期』から始まり、『アーリー期』、『ミドル期』『レイター期』と段階を経てM&Aによる合併や売却、上場の準備に進みます。
シード期~アーリー期である『シリーズA』の期間では、新規立ち上げに伴う起業家精神やリーダーシップ力が求められます。アーリー期~ミドル期の『シリーズB』では企業の拡大と成長を担当し、成長戦略の策定スキルやリーダーシップが必要です。ミドル期~レイター期の『シリーズC』では、グローバル展開や企業戦略の立案など大局的なビジョンをもとに企業を牽引する人材が求められます。
企業が求める能力と自分の経験・スキルがマッチングするかを考えつつ転職先を選ぶことが重要です。
スタートアップへの転職相談はCanWillへ
スタートアップ企業への転職を成功させるためには、業界研究を重点的に行うことが重要です。しかし、革新的な業務展開を行うスタートアップ企業では、急速な変化に適応する能力が求められ、同時に成長フェーズごとに必要な人材が異なります。転職時のアプローチにはスタートアップならではの難しさもあります。
『CanWill』は40代の方に向けてスタートアップ企業への転職サポートを行っています。キャリアコンサルタントがスタートアップの求人や市場動向を提供し、一人ひとりにカスタマイズされたアドバイスや提案などをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。