転職で即戦力人材を求めすぎる企業側と候補者との大きな溝とは何か?

転職で即戦力人材を求めすぎる企業側と候補者との大きな溝とは何か?

即戦力となる人材を中途採用で確保したいと考える企業側と、その期待に応えようとする転職希望者側。年齢が上になればなるほどその傾向は強まり、20代ならポテンシャル採用の可能性はあっても40代以上になるとなくなり、即戦力人材を欲しがります。

一見win-winの関係に見えますが、実は大きな溝があります。転職活動中に起こり得る、即戦力人材のミスマッチについて考えていきます。

企業はなぜ即戦力人材を求めすぎるのか?

企業側はなぜ、即戦力人材を欲しがるのでしょう? 理由として考えられるのは、優秀な人材が他の企業に転職して業務に支障が出るほど大きな穴が開いてしまったとか、人材育成にかけるお金や時間の余裕がない、シンプルに即戦力人材に活躍してもらって、会社の業績に貢献してもらいたいなどがあります。

しかし、これらはすべて企業側の勝手な都合です。こうした即戦力を求めすぎる姿勢はまず、求人票にはっきり現れます。業界経験は3年以上、英語はビジネスレベル必須、マネジメントを経験した管理職限定など、採用条件がどんどん厳しくなっていきます。

あまりに厳しい採用条件にすると、自分のキャリアやスキルでは内定がもらえないと考え、転職希望者が激減します。また採用条件の厳しさに見合った見返りがないといけません。これだけの条件を希望するなら年収は多くもらいたい、大きなプロジェクトにアサインして欲しい、知名度のある会社であって欲しいと転職希望者側も考えます。

即戦力ばかりを求めて採用条件を厳しくしていると、情報は当然転職エージェントの耳にも入ります。ある有名企業の求人が1年以上も公開されていたことがあって、理由をキャリアコンサルタントに尋ねたところ、あまりの採用条件の厳しさから誰も内定まで至らないという話でした。その情報が転職エージェント間で、自然とシェアされていたのです。

こうした求人が長く公開されていると、転職希望者の間であの人気企業には何かある、転職先から外しておこうと疑心暗鬼になります。即戦力人材を求めすぎる姿勢が弊害になった一例です。

即戦力にプレッシャーを感じる転職希望者

今度は転職希望者からの目線で、即戦力について考えてみましょう。

企業側から即戦力を期待され、早く結果を出さなければならないとプレッシャーを感じる方は多いと思います。とはいえ、いくら同業種・同職種からの転職であったとしても、前職と全く同じ仕事の進め方にはなりません。

業界用語や専門用語を理解できている分、アドバンテージはあります。しかし稟議の通し方であったり、会議の進め方、他部署との社内交渉であったりなど、前職とは全く違う企業文化にどんなに即戦力であっても最初は戸惑うはずです。

即戦力を期待されるあまり、プレッシャーを感じて前職の仕事の進め方で押し通してしまうと、今度は新しい会社の仲間から反発を招いてしまいます。いくら即戦力であっても、転職直後から仕事で成果をあげるのは簡単ではありません。

そう考えると、即戦力人材なんているわけない!と思いたくもなりますが、会社が変わっても前の会社のスキルをそのまま使える職種も存在します。例えば会計の知識はどの会社でも共通していることが多く、転職しても短期間で業務のキャッチアップがしやすいですし、プログラマーなどシステム系でも同じ言語を使っていれば即戦力になれるケースもあります。

要は企業側が即戦力人材を募集しやすい職種なのか、そうでないのかを理解しておくべきです。なんでもかんでも即戦力人材を求めすぎてしまうとプレッシャーを感じてしまい、せっかく採用したのに早期退職につながりかねません。

40代以降の即戦力人材にも少し余裕を持たせる

40代以上の転職希望者は、20代や30代と比べると年収は高くなる傾向にあります。転職エージェントに支払う採用時のコストも考えると、上の年齢の人ほど早く会社に貢献してもらい、採用コストを回収したい気持ちにもなります。

また即戦力で仕事の基礎は理解しているからと入社後の研修をあまりやらずに、いきなり若手人材の育成をお願いするケースもありますが、これもコストを抑える企業側の意識のひとつです。

40代の即戦力人材でも、定年まで会社に居るとするならあと25年は在籍します。すぐに結果を残して欲しい気持ちも理解できますが、あまりにプレッシャーをかけ過ぎるとすぐに会社を辞めてしまい、一から採用活動や人材育成をやり直す必要に迫られるかもしれません。

急がば回れと言いますが、40代以上でも仕事の進め方や基幹システムの使い方など最低限の研修機会を設けて待ったほうが、3か月後、6か月後になって、即戦力としての本来の力を発揮してくれると思います。

上司や同僚、他部署との連携などコミュニケーションの機会が増えて、働く下地ができれば即戦力としての能力が発揮しやすいかもしれません。

最初の3か月間は、新しい職場に馴染むまでの違和感を記録してもらうといいです。転職直後は前職と現職の比較を頻繁に行います。新しい会社のやり方がいい場合もありますし、前の会社のやり方に変えたほうが仕事の効率化になる場合もあります。

即戦力とばかりに尻を叩き過ぎると、考える間もなく前職のやり方を押し通してしまって反発を買うので、慣らし運転の期間は大切です。

短期で成果を求める必要があるならやむを得ませんが、長期的な視点で人材育成を考えたほうが企業側にとっても転職希望者側にとってもメリットがあるように思います。

CanWillとは

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