50代がセカンドキャリアを考えるときのポイントと選択肢
役職定年や待遇の悪化などの不安が重なる50代。将来のことを考えて、「どのようなキャリアを進むべきだろうか」と悩む方もいるのではないでしょうか。
人生100年時代といわれる現代においては、定年を迎えた後30年以上も人生が続くと考えた場合の「セカンドキャリア」について50代から準備を始めることが重要です。定年年齢や年金支給の開始時期が引き上げられるなどの変化もあり、リタイアや転職を視野に入れながら将来のことについて考えなくてはなりません。
この記事では、50代の方がセカンドキャリアについて考える際のポイントやどのような選択肢があるかについて詳しく解説します。
出典:厚生労働省『高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~』『厚生年金の支給開始年齢は?』
なぜ50代でセカンドキャリアを考えるべきか
50代は定年までの期間が短くなり、その後の人生を現実的に考えることができる時期です。若い時期からセカンドキャリアを考えている方もいるかもしれませんが、50代のうちにそのキャリアやライフプランを見直す機会を設けることをおすすめします。
定年を迎え退職したあとに働かない場合、退職金とこれまでの貯蓄、年金で生活を送ることになります。社会情勢の変化から終身雇用制度がなくなりつつある現代では、早期退職も選択肢の一つです。
令和元年の金融庁『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』によると、退職金給付制度がある企業は徐々に減少し、平成30年には全体の約80%となっています。平成29年の定年退職者への退職給付金額は平均1,700~2,000万円程度で、ピーク時の平成9年頃から約30~40%減少しているという調査結果が出ています。
このような状況から、通常の生活費に加え、医療費や介護費用などの支出を考えると、早い時期から老後のライフ・マネープランを検討することが重要です。金融面の不安に対処するために、定年後に働き続ける選択をする方も増加傾向にあります。
出典:金融庁『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』
セカンドキャリアを考える際のポイント
現代では、50代は人生の折り返し地点です。残り半分の人生で成し遂げたいことややってみたいことを整理し、自身のキャリアを見直してセカンドキャリアについて現実的に考え始める時期でもあります。
ここからは、現在50代の会社員がセカンドキャリアを考える際に整理すべきポイントについて紹介します。
キャリアやスキルの棚卸し
セカンドキャリアを考える際には、自分自身を分析することが大切です。今までの仕事で身につけてきたスキル、経験などを棚卸しして自身のキャリアを振り返ることで、客観的に自分の強みを分析します。
自分の市場価値と自分が希望するキャリアを比較して、スキルや能力が足りない部分を見極めることで、今後どのような道を歩むべきかが判断しやすくなるはずです。
また、転職エージェントや専門家などの第三者から意見やアドバイスをもらい、客観的に自身を見極めることも一つの方法です。
目指したいキャリアのゴールを考える
キャリアの棚卸しをしたら、「何歳まで働きたい」「どのような働き方がしたい」といった自身の希望を軸に、将来の自分と家族の人生を設計しましょう。
家族の生活を維持するためのキャリアや、老後の生活を視野に入れたゴールを設定することが重要です。5年、10年先にどのような仕事をして、どのような生活がしたいかなど、自分の人生におけるゴールから逆算してキャリアを考えるのもおすすめです。
必要な資格やスキルを身につける
棚卸しした自分のスキルや経験と自身が定めたゴールを比較すると、何が足りないのか、どのようなことを学ぶべきかを知ることができます。
例えば、キャリアのゴールを考えたときに転職が必要だという結論になった場合、希望の業種や職種に就くために自分に足りないスキルや能力を補うことが望ましい場合があります。
その際、自身の経験やキャリアを振り返り「リスキリング」に取り組むことがおすすめです。リスキリングは、仕事で必要となる新しい知識やスキルを学習し、習得しなおすことを指します。
リスキリングで習得できるものは、専門的なスキルの習得や資格の取得をはじめ、問題解決や創造性、コミュニケーションスキル、リーダーシップ、時間管理など多岐にわたります。
セカンドキャリアでは、会社員として経験してこなかった領域にも挑戦できるチャンスです。挑戦したい業界・業種に必要な資格やスキルが分かっていれば、早めに取得しておくのをおすすめします。
過去と未来の両方から考える50代のセカンドキャリア
自分が今までの仕事を通して経験したことや将来的な目標を整理することで、セカンドキャリアを育てていくことができます。しかし、初めてセカンドキャリアについて考える方にとっては、やりたいことや将来のことが漠然としていて難しく感じるかもしれません。
ここからは、セカンドキャリアを決める際に何をどうしてよいか分からないという方に、試してほしい3つの考え方を紹介します。
1. 50代になったら自分の名前をエゴサーチしてみる
50代になった皆さんは、自分の名前をインターネットの検索エンジンで検索した経験はありますか。エゴサーチと呼ばれるこの行動は、自分の市場価値が分かる指標の一つです。
例えば、自分の仕事やプロジェクトの成果を講演会で発表した方、業界紙やメディアなどの取材を受けた経験のある方は、自身の名前や会社名、役職が検索結果に表示されるはずです。もし50代で転職をする場合、会社の人事はあなたの名前をネット検索しているかもしれません。
あるいは、自分の仕事とは無関係の活動、例えば趣味のブログや会社の枠を超えた社外メンバーとの副業、SNSを使った継続的な発信といった活動が検索結果として表示されることもあります。
インターネット上に記録されている軌跡は、社外からの評価として、転職あるいは起業の際に有効活用できるのではないでしょうか。
2. 50代からのセカンドキャリアでペンネームを育てる
セカンドキャリアを育てていくうえで、今までのキャリアの延長で考える50代は多くいます。しかし、セカンドキャリアには、これまで経験してきた業種や業界とは違う道で、仕事を得る方法もあります。
50代を区切りに、本名ではなく新しくペンネームをもらって活動を始め、その名前を世に広めるとしたら、どのような方法をとるか考えてみましょう。会社名も役職も実績もないペンネームをゼロから育てるとしたらどのような行動をしますか。
例えば、以下のようにさまざまな方法を考えることができます。
- これまでのキャリアでつながった人脈を頼って名前を広める
- プロモーションに強い会社に頼る
- 自らSNS等で発信してみる
- 動画配信サービスを利用してみる など
会社の商品やサービスを売り込むことに慣れている50代は多くても、なかなか自分自身を売り込んだり、営業したりすることをしてきた方は少ないのではないでしょうか。自分のペンネームを育てるシミュレーションを一度やってみましょう。
3. 50代からのセカンドキャリアはプランより実行
キャリアコンサルタントを利用したことがある方は、60代、70代になったときの自分を想定して、長期のキャリアプランを考えるようにいわれた経験があるかもしれません。
キャリアプランを頭で考えることも必要ですが、それと同時に小さな実行を多く積み重ねることも大切です。これまでの経験を通して多くの知識や経験を兼ね備えている50代。人生経験は自分の力になる一方で、現状を保持したいといった保守的な考えも生まれがちです。
思い切って実行に移すことで、50代からのセカンドキャリアの方向性が正しいか間違えているのか、軌道修正が必要なのかが見えるようになります。一つの仕事から次の仕事が生まれるような仕事の連鎖のきっかけを作るためにも、小さいステップからでも実行に移すことが大切です。
50代にはどのようなセカンドキャリアがあるのか
セカンドキャリアを決めるときは、将来に向けてどのような仕事がしたいかを具体的に考えることが重要です。さまざまな選択肢の可能性を考えることで、活躍できる場が広がるかもしれません。
ここからは、50代のセカンドキャリアにはどのような選択肢があるかについて紹介します。
1.今までの会社で嘱託社員として働く
1つ目は、定年まで働いた会社に決められた期間ごとの契約をして勤め続ける選択肢です。
よく嘱託社員といった表現をされますが、この嘱託社員というものに明確に条件があるわけではありません。一般的に、定年後に再契約し非正規雇用として働くケースが多いです。
同じ会社で継続して働く場合でも、役職や現在のポジションから変わり、年下の上司の存在や業務の範囲なども変化などがあります。正社員時代の働き方とのギャップがある可能性について、決断する前によく考えておくことをおすすめします。
2.経験を活かして転職する
2つ目は、経験が活かせる同業種へ転職する選択肢です。
50代の転職は求人数が限られることからハードルが高いといわれています。しかし、自身がこれまで築いてきた今までのキャリアを求める企業も存在します。専門的なスキルや知識などを活かせる同業種であれば、転職を検討することも自身の可能性を広げる一つの方法です。
また、50代の転職を得意とするエージェントやキャリアアドバイザーからのサポートを受けながらの転職の機会を得るのがおすすめです。若い世代と比較すると50代の求人数が少なく、公開されている情報も限られます。転職エージェントを利用することで、非公開求人へのアクセスができ、情報収集がしやすくなります。
3.新しい分野へ挑戦する
3つ目は、今まで経験を積んだ分野ではなく、興味のあることや好きなことを仕事にする選択肢です。
リタイア後に飲食店や新たなビジネス、農業を始めたという先人の例を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。自分のやりたいことのために起業したり、新しい業界・業種に挑戦したりすることは生きがいにつながります。
現代では、60代で定年を迎え退職したあとも長い生活が続きます。セカンドキャリアは若いころ思い描いた夢や理想を実現するチャンスでもあります。
50代未経験の業種への転職を成功させるには
50代未経験でも転職できる職種を探すと、警備関係や営業職、介護福祉のお仕事が候補として挙がります。とにかく目先の生活費を稼ぐために、どのような仕事でもよいから転職する必要がある場合は、こうした職種も視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。
人生をさらに充実させたいという方は、これまでのキャリアの延長線上の仕事ではなく、あえて未経験の職種にチャレンジするのもおすすめです。
ポータブルスキルを活かす
50代からのセカンドキャリア、あるいはキャリアチェンジで、全くの未経験の職種に転職することはとても勇気が要ります。しかし、異業種、異職種への転職であっても、仕事には必ず共通して使えるスキルがあります。その一つに挙げられるのが「ポータブルスキル」です。
ポータブルスキルとは、業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能なスキルのことです。具体的には、仕事のやり方や人との関わり方に関する以下のようなスキルを指します。
▼ポータブルスキルの例
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力
- 課題発見力
- 問題解決力
- 論理的思考力
- プレゼンスキル
- リーダーシップ など
なかには、「専門的なスキルよりも、ポータブルスキルに長けている方のほうが採用しやすい」といった声もあります。専門的なスキルはある程度の基礎があれば、後から身につけることも可能です。
しかし、ポータブルスキルはその人の素養が大きく関係します。一朝一夕で身につくスキルではないため、幅広い仕事内容で重宝されることが期待できます。
ブランクがある場合
自分のキャリアを犠牲にして、配偶者の仕事を優先したり、出産や子育てのために専業主婦(主夫)を続けたりといった長いブランク期間からほぼ未経験と企業側が判断するケースもあります。もしも収入を得ることを第一の目的にするのであれば、先述のような介護や福祉の求人ばかりが見つかるかもしれません。両親や義両親の介護によるブランク期間がある場合は、その経験を介護福祉の仕事で活かすことができます。資格を所有している場合は、さらに有利に働きます。
ブランクが長かったからといって、以前就いていた職種や未経験職種を諦める必要はありません。条件が合えば、家庭の事情に対し理解を示してくれる企業も存在します。
一般的に50代の転職は難しいといわれているため、書類選考や面接で苦労するかもしれません。しかし、家庭の事情や希望の働き方を考慮しつつも、雇用形態や就業時間などを柔軟に変えることで、再就職や転職を成功させることは可能です。
セカンドキャリアについて悩んだら専門家に相談する方法も
現在の仕事で定年を迎えたあとのことについて、どうすればよいか自分だけで考えることが難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。また、セカンドキャリアを考えたうえで「自分のやりたいことが本当に実現できるのか不安だ」という方もいるはずです。
1人でセカンドキャリアを考えることが難しい場合は、キャリアコンサルタントやキャリアアドバイザーなどの専門家に相談することをおすすめします。このようなサービスを利用することによって、自身の市場価値や転職で活かせる強みなど、客観的な視点からアドバイスやサポートを受けることができます。
『CanWill』は、ミドル・シニア層のキャリアに関する悩みを相談できるサービスです。セカンドキャリアを考える際の、「明確なゴールを決めるのが難しい」「理想のキャリアに進むために何をしていいか分からない」などの悩みに親身に寄り添ってサポートいたします。セカンドキャリアについてお考えの方、定年後のキャリアに不安を持っている方は、ぜひお気軽にご相談ください。