定年後にやることがないと感じている人への3つの提言
定年後にやることがない人の特徴
会社員だった頃は、会社から決められた仕事や役割が与えられ、プライベートでも会社の仲間と一緒に行動する機会が多く、充実した会社員生活を送っていた方も多いと思います。
しかし仕事や役割を失ってしまった定年後は、急に何もやることがなかったり、燃え尽きて暇になったりしがちです。せっかく自由に使える時間が増え、人生を楽しめるチャンスなのに、暇でやることがないと本当に苦痛です。
どうやったら定年後にやることがない人から脱却できるか、3つの提言をします。
定年後にあえてルーティーンを作る
仕事上のルーティーンは、退屈だったかもしれません。しかし、定年後にやることがない人にとって、ルーティーンはむしろありがたいものです。自分で決めた役割を決まった時間に行動できるよう、自分自身のルーティーンを作りましょう。
例えば、犬の散歩、掃除や洗濯、スポーツクラブに通うなどの時間、子どもたちの育児の手伝い、学び直しの時間など、1週間の予定を、自分の考えたルーティーンでブロックしていきます。
会社に勤めていた頃は、始業時間や就業時間、昼食の時間など、自然とルーティーンができていたはずです。しかし、定年後はこうしたルーティーンが無くなった結果、生活のリズムが崩れ、ダラダラと過ごしてしまうのです。
定年後にあえてルーティーンを作ることで、定年後の生活にリズムやハリが生まれます。ルーティーンを繰り返していくと、いつの間にか習慣になります。定年後の人生を豊かにするルーティーンかどうかを見極めながら、少しずつ習慣化していきましょう。
定年後にこそ、仕事が好きになる
会社に所属していた頃は、与えられた仕事やプロジェクトをこなしたり、部下を育てたりなどで精一杯だったかもしれません。しかし定年後は自らが主役となって、自分のために仕事を作っていくことになります。
定年後の生活の例として、ボランティアや町内会の役員などが挙げられますが、やることがない人がやむを得ず役割を見つけた感じもあります。定年後も社会の一員としてバリバリ働きたい、若い世代と交流を深めたいと考えている方は多くいるはずです。
今まで仕事が嫌いだった方でも、自らのために始めた仕事なら好きになれる、仕事に愛着が湧く方もいます。会社から仕事が与えられる苦しさから脱却し自ら生み出す仕事の喜びを知ったとき、それが定年後の生きがいになり、仕事が好きになるかもしれません。
定年後の楽しみを決める6つの軸
東京都福祉保健局が提案する「夢を実現するために50歳からできること」をご紹介します。定年後の楽しみを決める6つの軸がこちらです。
- 仕事:ハローワーク、シルバー人材センター、起業、地域貢献
- 学び:通信制大学に入学、社会人大学の講座受講、資格取得、専門学校入学
- 趣味:音楽活動を再開、麻雀サロン開催、太極拳サークルに参加、料理教室に通う
- 社会貢献:東京マラソンのボランティアスタッフ、DVの電話相談員、子どもの剣道指導員
- 非日常:ニューヨークへ語学入学、油絵の個展を開催、沖縄でペンション経営
- 日常:映画ざんまい、ゴルフの練習場通い、市民農園で野菜作り
定年後の楽しみは、これまでの自分の人生の中にあります。今まで会社のため、家族のために我慢してきたことでも、定年後ならできるものが必ずあるはずです。改めて、自分の人生を振り返ってみて、やれなかったこと、できなかったことを挙げてみましょう。
今までやってきた趣味は、本当に楽しいものでしたか?仕事のストレス解消のため、気を紛らわすためだけの目的から趣味になってしまったものを軸にすると、定年後にやることがない人へ逆戻りする可能性があります。これら3つの提言を活用しながら、定年後の時間を有効に活用しましょう。
定年後の楽しみを決める軸をお金で分ける
定年後の楽しみを決める6つの軸は、お金のかかるものとお金を得るものに分かれます。
例えば「仕事」はお金を得るものですし、「ボランティア」は全くお金が得られないか、寸志程度の報酬しかありませんが、それでも支出はほとんどありません。しかし「学び」「趣味」「非日常」「日常」の4つは、お金が必要になります。
「趣味」や「日常」であれば多くのお金を必要としないので問題ありませんが、「非日常」は若い頃からの自分の夢を実現するためや新しい事業などに多額の資金を使う場合があります。悔いのない人生にするためにお金を使うことも大切ですが、若い時ほど軌道修正が難しくなるので、お金の使いどころには慎重さが求められます。
また、子どものために財産を残しておきたいと考える親は多くいますが、実際は子どものための財産ではなく、自分の介護費用にあてることになる可能性もあります。それでも子どもが介護費用を負担する必要がなければ、親としては面目躍如といったところでしょう。
お金が必要な定年後の楽しみの軸を実現するためには、自分の資産がどれくらいあるかを考えなくてはなりません。年金収入と保有資産を考え、どれだけのお金を定年後の楽しみに使えるかシミュレーションしておきましょう。
定年後のお金を使い切る発想もある
定年後を楽しむのではなく、生涯現役として社会と関わりながら働こうと考えている人もいると思います。定年後を楽しみたくても住宅ローンの返済のために働く方もいれば、自分の健康を維持し、張りのある生活を続けるために働く人もいます。
後者の方は、生きている間にいかにしてお金を使い切るかについても考えてみてください。お金を貯める以上に、生きている間にお金をうまく使うほうが難しいかもしれません。
自分が何歳まで生きられるか分かりませんし、いつ病気になるか、介護が必要になるか分からないので、貯金して安心したい気持ちは分かります。でも亡くなる寸前になって手元にお金がたくさん残っていたら、もっと定年後の楽しみで使っておけばよかったと後悔すると思います。
老後の生活費や病気・介護の費用を残しつつ、余力ある資金でいかに自分の人生を楽しみ、充実させるかも忘れてはいけません。貯蓄するノウハウはたくさんありますが、自分の人生を楽しみながらお金をうまく使い切る方法はあまりなさそうです。でも意識しておくことが人生を豊かにしてくれます。
なぜ定年後に趣味を持つことが大切なのか?
最後は健康面から、定年後について考えてみます。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの調査結果によると、高齢になって自由に過ごせる時間が増えたとき、その時間に好きな趣味を楽しむことが認知機能(考える、記憶する、判断するなどの知的能力)を維持するために効果的であることが分かりました。
調査では、休日や余暇に「家でごろ寝」、「買い物・外食」、「趣味」を選択した人の認知機能の維持を調べたところ、「家でごろ寝」、「買い物・外食」の人は認知機能の維持と関係がありませんでした。しかし「趣味」を選んだ人は、認知機能の低下するリスクが下がっていたのです。
加齢によって脳は老化していきますが、定年後にできた多くの時間を趣味に充てることで、認知機能の維持ができます。特に知的な刺激にあふれるライフスタイルにするといいようです。
定年後にどんなに時間やお金があったとしても、健康でなければ本当に人生を楽しむことはできません。仕事が趣味という人も、新しく別の仕事や社会的な役割を見つけるか、すぐにでも上記の6つの軸を参考にしながら新しい趣味を見つけましょう。