50代女性の転職は難しい? 主な転職理由と再就職成功のポイント
現在、働いている50代女性の中には「定年まで本当に今の仕事を続けるのか」「定年後も働ける仕事を見つけたい」と思っている方もいると思います。定年までの期間が短くなり、リタイア後の人生を現実的に見つめ始める50代。キャリアアップはもちろん、職場環境や自身のライフステージの変化により働き方を改めるため、行動を始めるよいタイミングとも考えられます。
その一方で「50代での転職は難しそうだ」と悩んでいる方も少なくありません。この記事では、50代の女性が転職をする際の厳しいとされる理由、再就職や転職を成功させるためにできることなどを紹介します。
50代女性の転職の厳しさ
厚生労働省の『令和4年雇用動向調査結果の概況』によると、常用労働者数に対する過去1年間に就業経験のある転職入職者の割合(転職入職率)は、年齢が上がるにつれて下がる傾向にあることが分かります。
▼女性一般労働者(パート以外)転職入職率
年齢 | 転職入職率 |
20~24歳 | 15.5% |
25~29歳 | 11.6% |
30~34歳 | 9.6% |
35~39歳 | 9.9% |
40~44歳 | 7.9% |
45~49歳 | 7.7% |
50~54歳 | 8.2% |
55~59歳 | 6.1% |
厚生労働省『令和4年雇用動向調査結果の概況』を基に作成
50代女性の転職入職率は6.1〜8.2%となっており、20代30代と比べると割合が低いことが分かります。「転職は年齢が上がると難しくなる」ということを結論づける結果が出ているのが現状です。
また、40代の転職入職率と比べると50代前半では上昇し、50代後半になるにつれ下降する傾向が見られます。
この結果から、50代の転職は早めに検討するのが望ましいといえます。50代女性も、今までの経験やスキルを活かすことができれば、正社員への転職は十分可能です。一方で、50代での転職が現実的に難しいといわれる理由もあります。
出典:厚生労働省『令和4年雇用動向調査結果の概況』
ライフステージの変化に伴うブランク期間がある
女性は、結婚や出産、子育てなどライフステージが変化することにより休職や退職、正社員からパートや派遣社員への変更などを必要とする場合があります。もちろん、男性が働き方を変更するケースもありますが、一般的に女性の方が割合は高くなる傾向にあります。
令和5年に行われた総務省統計局の『労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の概要』によると、正規の職員・従業員数は女性のほうが少ないという結果が出ています。
▼男女別の正規の職員・従業員数
性別 | 正規の職員・従業員数 |
男性 | 2,346万人 |
女性 | 1,268万人 |
総務省統計局『労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の概要』を基に作成
女性の正規雇用は男性の正規雇用のおよそ54%にしか満たないことが分かります。育児や介護などの時間を確保するために、正規雇用以外の雇用形態に変更する女性が多いことが理由の一つです。
子育てや家庭のことが落ち着いた段階で、正規雇用として仕事に復帰したいと思う方が多くいます。その一方、ブランク期間が長くなるほど「即戦力としての期待ができない」といった理由により、マイナスにとらえられる可能性もあります。ブランクなく働き続けている50代は管理職や取締役といった役職に就いていることが多いため、キャリアを中断している求職者が不利になる傾向があります。
出典:総務省統計局『労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の概要』
希望の働き方ができる求人が少ない
平成19年10月の雇用対策法の改正では、企業の募集や採用における年齢制限の原則禁止が義務付けられました。
事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。 |
引用元:e-Govポータル『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』
しかし、厚生労働省の『関東労働市場圏有効求人倍率(※)』によると、50代の求職者に対して求人数が少ないのが現状です。
▼令和6年6月の年齢別関東労働市場圏有効求人倍率
年齢 | 有効求人倍率 |
34歳以下 | 1.56倍 |
35~44歳 | 1.32倍 |
45~54歳 | 0.90倍 |
55歳以上 | 0.78倍 |
厚生労働省『関東労働市場圏有効求人・有効求職 年齢別バランスシート(一般常用)』を基に作成
34歳以下と比べて50代は有効求人倍率が下がっており、有効求人倍率は年齢が上がるにつれて下がる傾向にあります。そのため、希望の働き方ができる求人も少ないといえます。
※求人倍率とは求職者に対する求人数の割合のこと。「月間有効求人数」を「月間有効求職者数」で除して得た値を「有効求人倍率」という。
出典:厚生労働省『募集・採用における年齢制限禁止について』『関東労働市場圏有効求人・有効求職 年齢別バランスシート(一般常用)』/e-Govポータル『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』
50代女性が転職を考えるきっかけ
マイナビが発表した「ミドルシニア採用企業レポート」によると、50代を採用した理由のトップが「豊富な経験」です。次いで「年齢は関係ない」、「専門性が高い」、「モラルや責任感が高い」の順でした。企業が求める「豊富な経験」は抽象的ですが、これは何を指しているのでしょう?
これまでのキャリアやスキルに加え、主婦の方なら結婚や出産、子育ての経験を通じて、何か仕事に生かせるものがあるはずです。それらを箇条書きで語るのではなく、仕事に結びつけるストーリーを紡ぐことで、採用の確率が上がります。
50代女性の働き方は自分優先で!
マイナビの『転職動向調査2024年版』によると、50代女性の転職理由のトップは「職場の人間関係が悪かった」からです。20代女性・40代女性は「仕事内容に不満があった」、30代女性は「給与が低かった」がトップとなっており、職場の人間関係が原因で転職を考えるのは50代女性の特徴といえます。
▼50代女性における転職理由の抜粋(複数回答可)
転職理由 | 回答割合 |
職場の人間関係が悪かった | 40.0% |
仕事内容に不満があった | 26.7% |
自分のペースに合った仕事がしたかった | 20.0% |
給与が低かった | 13.3% |
会社の将来性、安定性に不安があった | 11.1% |
マイナビ『転職動向調査2024年版(2023年実績)』に基づいて作成
50代女性が転職理由に給与面や会社の将来性に関する理由を挙げている割合はほかの世代に比べて低いことからも、いかに職場の人間関係が大きな影響を与えているかが分かります。
50代は職場の人間関係だけでなく、家族との関係も大きな変化を迎える時期です。例えば、子どもの独り立ち、パートナーとの関係や自分の老後、親の介護問題など、自らの人間関係がうまくいかないと、ちょっとしたことでも職場の人間関係に不満を持ってしまいがちです。
そのため、仕事面では多少給与が低くても、良好な人間関係や経験を活かした仕事内容、希望にあった働き方などを重視するのかもしれません。
50代女性の転職を成功させるポイント
50代女性の中には、仕事のブランク期間がある方もたくさんいます。企業が求人する際、ブランクのある人材は選ばれづらいといった話を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。一般的に、企業がブランクのある人材を避ける要因として以下の懸念点が考えられます。
▼企業がブランクを持つ人に対して懸念すること
- そもそも働く意欲がないのではないか
- ほかの会社でも採用されなかったからブランクが長引いているのではないか
- 昔の働き方に固執せずに新しいやり方や業務内容に柔軟に対応できるのか
若い世代と比べると、50代の転職を成功させる難易度が上がることは否めません。しかし、転職に成功している50代女性もいるため、転職成功の可能性は十分にあります。転職を成功させるためのポイントをしっかりと抑えて準備することで、可能性をより高めることができます。
ここからは、50代女性が転職に成功する確率を上げるためにできることについて、具体的に説明します。
リカレント教育でブランク期間をカバーする
社会の変化や技術革新が進む現代では、それに伴う新たな知識やスキルを身につけることが求められます。そこで注目されているのが「リカレント教育」です。
リカレント教育は、社会に出たあとも学びと仕事を往復しながら、仕事に役立つスキルを身につけることを指します。学び直しとも表現され、人生100年時代といわれる今、旬なキーワードともいえます。
リカレント教育では、ブランク期間を利用したり、一度仕事から離れて時間をつくったりすることで、大学や専門学校、資格習得セミナーなどの教育機関で学び直すのが一般的です。また、働きながら業務と並行してスキルを学ぶ方法もあります。専門的な資格やスキルを学ぶことで、活躍できる仕事の幅も広がることに期待できます。
正社員の地位を確保したからといっても、安泰ではありません。加速する時代の変化に適応するため、つねにキャリアアップのために学習する姿勢が求められます。ブランク期間に何もしていなかったのではなく、何かを学ぶ行動に移すことで、採用の可能性を上げる要素になります。
今までの経験を活かせる仕事を探す
平成30年にマイナビが発表した「ミドルシニア採用企業レポート」によると、50代を採用した理由のトップが「豊富な経験」でした。次いで「年齢は関係ない」、「専門性が高い」、「モラルや責任感が高い」の順に続いています。
この結果から分かるように、50代の強みはそれまでの豊富な経験や専門性の高い知識が身についていることといえます。これまで仕事で培ってきたキャリアやスキルに加え、生活の中で経験した結婚や出産、子育てなどを通じて、何か仕事に活かせるものがあるはずです。それらを箇条書きで語るのではなく、仕事に結びつけるストーリーを紡ぐことで、採用の確率を上げることにつながります。
視野を広く持つ
転職活動を成功させるためには、業種や職種にこだわりすぎないこともポイントの一つです。今まで就いてきた仕事に固執しすぎてしまうと視野を広く持つことができません。
50代は、これまでの仕事や生活を通じてコミュニケーションスキルやリーダーシップ、マネジメント能力などのポータブルスキルを身につけていることが強みです。そのため、一つの業種や職種だけでなく、自分が身につけているすべてのスキルや能力を有効活用できる仕事を探すことが可能です。
今までの経験で培ってきた能力やノウハウは、業界や職種を問わず役に立つといえます。経験のある業界や仕事内容だけではなく、視野を広く持ち、どのような役割で自分をアピールできるのかを考えることが重要です。
無理のない働き方を模索する
「転職してよかった」と思える働き方を実現するためには、自分が望む理想の働き方を考えたうえで、時間の制約等を考慮しながら、自分に合った雇用形態を選ぶことが大切です。
無理な働き方でストレスを抱えてしまうと、せっかく決まった転職先で長く働き続けることができなくなる可能性もあります。ストレスを抱えながらお金のためだけに仕事をする働き方から卒業して、生きがいを感じられるような働き方に変えることも転職を考えるうえでのポイントといえます。
正社員だけでなく契約社員や派遣社員、パートなど、勤務時間や融通の利き方、休日の取り方など、さまざまな角度から検討して自分に合った働き方を柔軟に考えることが重要です。
50代女性におすすめの転職活動方法
50代女性が転職をスムーズに行うためには、専門の転職サイトやエージェントをうまく活用することがポイントです。50代を対象とする求人自体が少ないうえ、非公開求人もあることから、複数の転職サイトを利用するのがおすすめです。複数のサイトに登録することで情報収集を行いやすくなります。
転職サイトの選び方も非常に重要です。女性の求人に特化した転職サイトや、40代・50代の求人を集めたシニア向け転職サイトなど、自分の状況に特化した転職サイトに登録することで、採用の可能性を広げることができます。
また、ミドル・シニア世代を専門とするキャリアコンサルタントやアドバイザーに相談することも有効です。専門家のノウハウを活用し、職務経歴書の作り方や面接対策までサポートしているため、効率よく転職活動を進めることができます。
50代女性の転職や再就職はポイントを押さえて効率よく行おう
求められる能力の高さや求人の少なさから、50代の転職は若い世代と比べ転職の難易度は高くなります。それに加え、仕事をするうえでライフステージの変化や仕事のブランクを不利に感じてしまうこともあります。
しかし、これまでの経験から培った能力やスキルを長所として転職活動に活かせるのが50代の強みです。また、リカレント教育を積極的に行えば、新たな資格やスキルを習得することもできます。視野を広く持ち、雇用形態や休日の取り方などの条件を柔軟にすることで、希望の働き方に合う仕事を見つけられるかもしれません。
転職や再就職を考える際には、自分に合った転職サイトを有効に活用することが、採用率を上げるための秘訣です。転職アドバイザーやキャリアコンサルタントなどの専門家へ相談すれば、アドバイスをもらったり、サポートを受けたりすることも可能です。
『CanWill』では、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談を行っています。経験豊富なアドバイザーが、一人ひとりの状況に合わせてサポートします。キャリアに関する悩みがある方はお気軽にご相談ください。