多くの人が迷う退職。不安は時間が経過しないと解決しない
「もうこんな会社辞めてやる!」
と言いながら、なかなか退職しない同僚を見たことはありませんか? 潔くスパッと会社を退職できないのは、迷いや不安があるからです。まずは会社を退職する際、どんな迷いや不安があるのかを見ていきましょう。
退職のきっかけ
エン・ジャパン(株)が、約8600人に調査した「退職のきっかけ」というデータがあります。
退職を考えたきっかけの第1位は「給与が低かった」、第2位は「やりがい・達成感を感じない」、第3位は「企業の将来性に疑問を感じた」という結果でした。
さらに「人間関係が悪かった」、「残業・休日出勤など拘束時間が長かった」、「評価・人事制度に不満があった」と続くのですが、退職を迷っている方の多くは、これら理由のどれかに該当していると思います。この調査結果から、会社の制度や仕事そのもの、一緒に働いている仲間が影響して、退職を考える方が多いことが分かります。
しかし、こうした不満を抱えながら「辞めてやる」と何度も言いつつ、自らの立場や処遇改善を狙う人もいれば、迷いを断ち切って退職に踏み切る人もいます。ここには、どんな差があるのでしょう?
退職への迷いや不安は時間の経過で解決する
退職で迷う理由のひとつは、今の仕事に多少なりとも未練があるからです。
退職してしまったら、年収が下がるかもしれません。今より職場環境が悪化するかもしれません。次の仕事が今より面白くなかったり、見つからなかったりするかもしれません。そうしたリスクを回避しつつ、現状を改善するために「辞表」という最後のカードを使ってしまうようです。
また、退職を決意した瞬間に生まれる、現職への思いが迷いを深める原因になることもあります。
急に何かを失うことになったとき、その存在のありがたみや大切さに気づいた経験はありませんか? 今まで全く意識していなかったのに、退職を決めたあとになって、いい会社に思えたり、上司や同僚のすばらしさに気づいたりします。
退職とは正反対の思いが湧き上がってくるため、退職への迷いが生じます。自分は退職して前に進もうとしているのに、来た道を戻ろうとする思いに葛藤し、整合性の取れない行動に苦しみます。
実は退職しても、会社に留まる選択をしても、不安や迷いが完全消えるわけではありません。決断後もしばらくは、会社を辞めなければよかった、退職すべきだったと気持ちは揺れ動きます。
選んだ道を何年か経験したあとで初めて、自分の選択が間違いだったかどうか分かります。何十年か経って、異業種へキャリアチェンジしたときに、選んだ道が今の仕事につながって、選んだ道が正解だったと気づく場合もあります。選択のおかげで、今の自分があると思えるかどうかは、かなり先の未来にあり、時間が経過しないと分からないのです。
退職への迷いや不安の正体は、未来が分からないことへの不安でもあります。しかし、未来は誰にも分かりませんし、分からないから人生は楽しい、面白いと思えるところもあります。先が見えない不安の中で生きているわたしたちです、退職する決断もこの不安の中のひとつでしかありません。
迷いや不安の解消より、それらとうまくつきあっていく方法を模索したほうがいいかもしれません。